鼻の症状はご相談ください
鼻は外鼻(顔の外に張り出している部分)と鼻腔(鼻の中の穴)、および副鼻腔(鼻腔を取り囲むようにしている空洞)から成ります。鼻はにおいを嗅ぐ機能だけでなく、呼吸器官、また声の共鳴に関わる器官としての大切な働きを担っています。鼻は肺や気管を守るために、吸った空気を十分に温め、加湿し、ウイルスや細菌、埃などの体内への侵入を妨害して、きれいな空気を肺に送り込むためのフィルターのような役目をしています。そんな鼻が病気にかかり、吸い込んだ空気が浄化されなくなったり、口呼吸をすることになったりすると、ウイルスや細菌が喉や肺に直接侵入してしまい、様々な悪影響をもたらします。鼻がつまる、くしゃみや鼻水が出る、においがわからない、鼻や頬が痛むなどの症状が現れたら、どんなことでも早めにご相談ください。
こんな症状はご相談ください
- くしゃみ
- 鼻みず
- 鼻づまり
- 鼻が痒い
- においがわからない
- 鼻や頬が痛む
- 鼻血
- いびき など
アレルギー性鼻炎
アレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因となる物質)を吸入することで、抗原と抗体が鼻の粘膜で反応し、鼻症状を起こすのがアレルギー性鼻炎です。風邪と違って、喉の痛みや熱などは伴いません。アレルギー性鼻炎(通年性)の原因は家の埃やダニの糞・死骸などです。ペットのフケやカビも原因となります。季節性のものはスギなどの花粉症です。
- 症状
- アレルギー性鼻炎の症状は、主として鼻と目に現れます。なかでも、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりが、その3大症状です。
- 検査
- まずは、鼻炎の症状がアレルギー性かどうかを調べます。検査には問診、鼻鏡検査、血液・鼻汁好酸球(こうさんきゅう)検査などがあります。また、アレルギー性であったならば、何が原因(アレルゲン)になっているかを調べます。近年お子さまのアレルギー性鼻炎は増加しており当院ではお子さまでもアレルゲンが簡単に検査できるキットを導入しております。
- 治療
- アレルギー性鼻炎の症状を軽くするには、とにかく家の埃、ダニの糞・死骸、ペットのフケやカビなど、アレルギーの元にできるだけ曝されないようにすることです。こうした策を講じた上で、抗アレルギー薬の飲み薬や鼻スプレーで症状を抑えていきます。
花粉症
花粉症とは、アレルギー性鼻炎の一種で、特に植物の花粉が原因となって、目の痒み・異物感・充血、涙、立て続けのくしゃみ、鼻水、鼻づまり、などの症状を引き起こします。原因物質としては、スギやヒノキの花粉がよく知られていますが、これら以外にもアレルギーを引き起こす植物には、シラカンバ、ハンノキ、カモガヤ、イネ、ブタクサ、ヨモギほか、たくさんの種類があります。
- 症状
- 目の痒み・異物感・充血、涙、立て続けのくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が現れます。ひどくなると、咳、喉や皮膚の痒み、頭痛、倦怠感、微熱、不眠、下痢、体や顔のほてり、イライラ感などもみられるようになります。肉体的にも精神的にもダメージを受けて意欲が低下し、生活の質(QOL)が大きく損なわれてしまうこともあります。
- 検査
- 問診や鼻鏡検査を行うとともに、血液検査によってアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因となる物質)を特定します。
- 治療
- 抗原回避(アレルゲンを近づけない環境整備)および薬物療法を中心に進めます。治療法には、主に以下のような方法があります。
内服薬
花粉の飛散が開始する2週間前(症状の出る前)から飲み始めます。症状が出てから薬を飲み始めるのに比べて、症状が軽く済むことが多いというデータがあります。特に鼻汁、くしゃみが強いタイプの人には効果的です。
鼻スプレー
花粉症治療の効果が強く、副作用が少ないため、症状や鼻づまりが強い人には、内服薬に加えて局所スプレーを併用します。
レーザー治療
慢性的な鼻づまりでお悩みの方には、アレルギーへの過剰反応を鈍らせることが可能なレーザー治療などもあります。
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スギ舌下免疫療法について
スギの免疫療法とは、内服治療などの対症療法とは異なり、唯一スギ花粉症を根治できる可能性のある治療法です。また喘息の発症する事を予防したり、スギ花粉以外のアレルギー疾患の予防にも効果が期待できると言われています。免疫療法には、皮下注射で行う方法と舌下免疫療法で行う方法の2種類があります。それぞれメリット、デメリットはありますが、当院では舌下免疫療法を行っております。
実際の方法
まず、初回の一回目はクリニック内でスギ花粉製剤を試して頂き、30分ほど様子をみます。問題が無ければ2回目以降はご自宅での治療となります。
最初の2週間で徐々に濃度を上げていき、3週間目以降は同濃度(維持量)で2年間継続していただきます。 その間、通院は1回/月 の間隔です。2年後に効果が認められるようであれば、3~5年間継続する事をお勧めします。
舌下免疫療法が行えない方
- 11歳未満の方
- 重症の喘息をお持ちの方
- 重症の心臓病の方
- 妊娠中の方
- 悪性腫瘍や免疫系(自己免疫疾患、 免疫不全症 など) の治療中の方
- ステロイド内服治療をされている方
- βブロッカー、3環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬を内服中の方
舌下免疫療法の注意点
- 副反応が起こる可能性があります。
- ⇨臨床試験での全副作用発生率は13.5%で、最も多いものは、口内炎や舌下の腫脹、口腔内や耳のかゆみ、など比較的軽症のものでした。
治療開始後1ヶ月間に多いようです。 - 稀にアナフィラキシー症状を起こす可能性があると言われています。
- ⇨シダトレンの臨床試験では報告はありませんでした。
- 治療は最低2年間は継続する必要があります。
- ⇨ご希望にもよりますが、3~5年間継続するのが望ましいと言われています。なかなか根気のいる治療法です。
- 人によっては効果が感じらない方もいらっしゃいます。
- ⇨全ての方に効果が有るものではありません。
治療効果の見込み
寛解(ほぼ症状がなくなる状態) | 約20% |
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非常に有効 | 約30% |
有効 | 約30% |
効果なし | 約20% |
治療開始時期
スギ花粉の飛散時期は治療を開始することはできません。
当院では6月〜12月末までが治療開始に適していると考えております。
副鼻腔炎(蓄膿症)
鼻の副鼻腔という場所に炎症が起きる病気です。風邪の症状が出てから1週間ほどしてから、風邪に続いて細菌感染が副鼻腔に起こり、発症します。
- 症状
- 黄色い鼻汁が絶えず出てきて、よく鼻をかむ、常に鼻がつまっていて口で呼吸している、いびきをかく、においがわからない、頭痛がする、などがあります。
- 検査
- 鼻鏡検査・内視鏡検査、X線検査、CT、細菌検査などを行います。
- 治療
- 薬物療法や、抗生剤の入ったネブライザー(吸入器)などを使った処置を行います。薬物療法でだいたいは治ることが多いのですが慢性化している場合、3ヶ月程度内服を継続することがあります。それでも治らない場合は、手術加療が必要になることがあります。
鼻血
鼻、特に鼻腔からの出血のことです。
- 症状
- 多くは手で触った時の出血や、外傷や感冒に伴う出血です。なんの前触れも無く出血することもあります。
- 検査
- 鼻の中をよく観察し、どこから出血しているのかを確認します。鼻の奥からの出血の場合、鼻腔用ファイバーを用いて出血部位を確認します。血液検査などを行うケースもあります。
- 治療
- 鼻出血の大半は、キーゼルバッハ部位という場所からのものです。キーゼルバッハ部位は、鼻に指を少し入れた時に指先が内側(鼻中隔:びちゅうかく)に触れる部分です。ここは薄い粘膜でできているうえ、たくさんの毛細血管が網の目のように走っているので、ちょっと傷がつくと出血します。この出血を止めるには、親指と人差し指で小鼻をつまんで圧迫するのが、簡単かつ効果的です。
鼻中隔彎曲症
鼻の穴を左右に分けている壁(鼻中隔)が、極端に曲がっている状態のことです。
- 症状
- 鼻がつまる、いびき、においがわからない、などの症状が出ます。頭痛、肩こり、注意力の減退、鼻血などの症状が出ることもしばしばです。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)があると、そうした症状は、さらに強くなります。
- 検査
- 鼻中隔が彎曲しているかどうかは、鼻を診察するとすぐにわかります。内視鏡検査やCT検査が行われることもあります。
- 治療
- 鼻づまりなどの症状がひどい場合は、鼻中隔矯正手術を行います。鼻中隔矯正手術では、曲がっている鼻中隔の軟骨・骨を取り除き、まっすぐに矯正します。手術は全身麻酔下で行い、通常約1週間の入院が必要になります。軽度であれば、局所麻酔での日帰り手術が可能なケースもあります。
嗅覚障害
鼻がつまっているわけでもないのに、鼻が利かなくなる疾患を嗅覚障害と言います。
- 症状
- においが感じられなくなります。
- 検査
- 原因を調べるために問診、内視鏡検査、画像検査などが、また嗅覚障害の程度を調べるために嗅覚検査などが行われます。
- 治療
- 原因によって、それぞれ治療法も異なってきます。嗅覚障害は原因によって、呼吸性、嗅粘膜性、混合性、中枢性の4つに分類できます。呼吸性は、においの分子が嗅粘膜というセンサーまで届かない状態で、鼻づまりやアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などが解消されれば、すぐに嗅覚は戻ります。嗅粘膜性は風邪ウイルスなどによって嗅粘膜、つまりにおいのセンサー自体に障害が生じている状態です。薬物で治療しますが、回復しないケースも見られます。混合性は呼吸性と嗅粘膜性が同時に起こった場合です。中枢性は頭部外傷などによる神経損傷が原因で、現在のところ有効な治療法は見つかっていません。また嗅覚障害の原因として多いのが慢性副鼻腔炎(蓄膿症)で、40%くらいを占めると言われます。慢性副鼻腔炎では呼吸性の障害が多いため、鼻の手術で換気が良くなれば、においの感覚も改善します。炎症やウイルスによって嗅粘膜に障害が生じたと考えられる場合、その治療としては、神経を活性化させるために、ステロイド剤の点鼻や、神経を活性化させるビタミンB剤の内服が主になります。